「ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ」の紹介
今回は伊藤守氏著の「ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ」を紹介したいと思います。
ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ
- 作者: 伊藤守
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2008/03/13
- メディア: 単行本
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プロジェクト達成の落とし穴
企業は様々なミッションを持ちそれを達成するためのプロジェクトを計画し、遂行しています。しかし、計画に基づき実行に移しても思った結果が出ない事があります。そのことを突き詰めていくと、「人」の動きが原因である事が多々あります。プロジェクトの計画を遂行し実行するのはシステムや仕組みでなく、「人」です。システムや仕組みはあくまで手段の一つです。計画ではアサインされる人間の適性や志向性は基本的に加味されません。しかし人が計画を実行に移さずしてプロジェクトの完遂には不可欠であり、人が動くための知識・知恵が必要なのです。
二つの時間を作る
マネジャーとして部下の適正、志向性を知るにはまずはコミュニケーションを取らなくてはいけません。そのためには①部下と話す時間 ②部下について考える時間を作る必要があります。
①部下と話す時間
とにかく部下と話すことを本書は推奨しています。席の近くを通った時、すれ違った時、目の前を歩いていた時などどのタイミングでも構いません。そこで時間をとり部下とコミュニケーションを何度も交わすことで、部下自身が自分は大切にされているという信頼関係が少しずつ養われていくからです。
②部下について考える時間
部下と話す時間を得られた際により部下を理解するために、何を話すか(聞くか)を事前に決めて置かなければいけません。そのために、予め部下の基本情報や今の状態、能力、適性などで自分が知っていることを挙げていきます。その上で自分が現在部下について知らない事がわかってきます。知らない事の中には知りたい事があるはずで、それを部下とのコミュニケーションの中で聞きます。
不測事態を部下の成長機会にする
日々の業務では部下に不測の事態(人間関係トラブル、顧客からのクレーム、業務量のの増加、過度なストレスなど)が降りかかることもあります。このような場合は事態が悪化する前に迅速なコーチングが必要になります。しかし、ここで重要なのは不測事態への解決案を提供するのでなく、対応・順応する力を身に付けることです。「不測事態」という受け身になってしまう状況の中で、自分で考え、自分から行動を起こし、後からその行動を自分で評価することを促します。それにより、一連のプロセスを通して自律性のある部下に育ちます。そのためにはマネージャは部下が問題や課題をどう扱うかをコーチします。例えば、
・問題に対して正面から向き合っているか、それとも後ろ向きか。
・今起こっている事態をどのように解釈しているか? どこ角度から見ているか?
などです。適宜、問題を解決するために必要な知識、スキルを教えて部下が自分で対応できるようにします。
質問の粒度を考慮する
3分間コーチングをするには雑談から入るには短すぎるため、具体的な本題にそのまま入ることを推奨しています。部下への話し方として例えば、
「スケジュールについて聞きたい事がある」
「ストレスは溜まってない?」
「人間関係、コミュニケーションについて少し話そう」
などです。このように上司が質問の仕方の見本としつつ、コミュニケーションを始めていくのです。ここで注意すべき点は聞いて意味のない質問(「元気か?」「仕事は順調か?」)などです。部下が「はい」としか答えようがない質問が該当します。このような質問だと、部下から価値のある情報を聞き出す機会を失ってしまいます。
今求められているコーチ型マネジャー像とは
「権威」を使って部下を従えていたマネージャにうって変わって、近年ではコーチ型マネジャーが求められています。従来のマネージャの役割とは以下の点で異なると本書で述べられています。
・従来のマネージャの役割
部下の業務遂行、目標達成を導き、部下の業績向上の責任を持つ。
・コーチ型マネージャの役割
従来のマネージャの役割に加え、部下にコミュニケーション、仕事の知識、スキル、リーダーシップ、問題対応、セルフコントロール、関係構築などの能力を身につけさせる。
ここで重要な点はたとえ問題解決をテーマにするときでも、解決方法をアドバイスしたり解決を指示せず、問題に対し様々な視点をもたらす事です。それにより、部下は問題や課題を解決する過程でどのような能力が必要かということを推察し、自律的に行動するようになるでしょう。そして、そのような積み重ねが個人と組織が双方成長する糧となるのです。
最後に
マネージャではないものの、私自身もうすぐ部下を持つような年次になってきたので本書を読み、コーチングのノウハウについて知りたいと思いました。会社に所属する以上、社長以外は上司と関わる機会は必ずあるため、基本的にはどのような役職でもコーチング「する」、「される」機会はあると思います。そういう意味では本書はどのようなビジネスマンでも役に立つ本だと思います。